topic1患者安全とは パート1

WHO患者安全カリキュラムガイドライン多職種版

世界基準の医療安全の教科書であるWHO患者安全カリキュラムガイドライン多職種版を簡単に解説します。トピック1は「患者安全とは」です。

1.患者安全の必要性

医療における避けうるヒューマンエラー(非懲罰)により害を被る患者が相当数存在するとが数多くの国の研究により明らかになっています。これは故意で傷つけたわけではなく普段はうまくいっていることが、さまざま要因が重なったことで結果的にエラーになってしまったことで発生します。これはひとりの患者さんに対して多くの医療従事者が横断的にかかわるようになった近年の医療システムが原因だといわれています。

多種多様な専門職が治療に関与することで質の高い医療を提供できることは大きなメリットであることは間違いありません。しかし個々の専門職が持つ情報を正しく共有することが非常に重要となります。そしてこの問題は医療関連感染、手術・麻酔、投薬、医療機器等の多くの領域で問題となります。

患者安全プログラムの実践に必要なのは医療従事者の一人ひとりの安全に対する意識と患者と家族と正面から向き合い、手順を見直し、再発予防を学び、情報を共有を図ることです。

 

2.人的および経済的損失

医療における有害事象は多くの経済的および人的損失を招きます。オーストラリア患者安全財団(Australian Patient Safety Foundation)の調査では医療上の過失に対する損害賠償と保険料は1997〜1998年の間で1800万オーストラリアドル(約15億円)でした。1999年には米国医療研究品質庁(AHRQ)が医療上のエラーを防止すれば年間約88億米ドル節約できる可能性があると報告しました。

 

3.他産業におけるエラーおよびシステムとしての失敗から得られた教訓

安全の文化は医療よりも航空業界や産業界の方が進んでます。いま医療に根付き出している安全の考え方や分析も他の産業から来てます。さらにもとを辿るとヒューマンファクターや心理学の知見が重要視されているのが分かります。WHO患者安全ガイドラインには下記の2つの事例が挙げられています。

  • 原発施設チェルノブイリの大災害
  • スペースシャトル「チェアレンジャー号」の墜落事故

いずれも事故の予兆を認識しておきながら、組織的な違反のために大事故に至った事例です。この他産業での教訓を分析し、個人を非難するアプローチではなく、環境(システム)を変えることにより安全を改善できると提唱したのがジェームズ・リーズンです。「誰が間違えたか?」ではなく「なぜ?どこで?システム上の失敗が発生したのか?」を分析して対策することが大切だと主張しました。それを図式化したのが有名なスイスチーズモデルです。

 

4.患者安全の歴史と「非難の文化」の起源

「気をつけてしっかりやれ」と精神論をふりかざすことに効果がないことは明らかにされています。ではなぜ非難するのか?

  • 誰かを非難したがるのは人間の性(さが)。
  • 人を避難することで感情的に満足できる。
  • 帰属理論:人間は生来、正解というものを理解したがる。予想外のことが起こると自動的に原因を理解しようとし始める。
  • 専門家なのだからできるはずだ。と考える思考が個人の責任・犯人探しを招く。

このような「非難の文化」では安全上必要な情報が、あるべき場所に集まることがなく再発防止策を講じることが不可能になります。事故が発生した場合は個人を非難するのではなくシステムのあらゆる側面からなぜ事故が起きたのか?なぜそのような行為に至ったのかを調査するのが通常であると述べられています。

 

5.患者安全モデル

患者安全は以下のように定義されています。

「 安全科学の手法を適用することによって、信頼できる医療提供システムの実現を目指す医療部門の学問領域である。患者安全は医療システムが備えておくべき重要な特性であり、有害事象の発生率と有害事象による影響を最小限に抑え、有害事象からの回復を最大限に高めるものである。」

患者安全を実行するには安全の改善方法の理解、同じシステム内で働く人々に対する理解と相互の人間関係,組織内の人間関係の理解などが重要です。

 

このような患者安全の課題を解決するためにはどうすべきは、「トピック1患者安全とはパート2」にまとめたいと思います。

参考文献:WHO患者安全ガイドライ多職種版 パートB 「トピック1患者安全とは」東京医科大学医療教育学医療安全管理学 http://meded.tokyo-med.ac.jp/who患者安全カリキュラムガイド多職種版について/  (参照2018年8月4日)

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