医療機器テスターのレンタルサービス「シェアパック」を辛口レビューしました!

トライテックのシェアパックをレビューする機会をいただきました。

シェアパックはトライテックのシリンジポンプテスターである『S Pテスター』と輸液ポンプテスターである『I Pテスター』のセットをレンタルするサービスです。https://tri-tech-service.jp/sharepack/

シェアパックには『S Pテスター』『I Pテスター』に加えて保守点検に必要なシリンジサイズチェック治具点滴バッグ輸液チューブ等の点検に必要な材料もセットになっています。シェアパックが届いたらすぐに点検が開始できるセットになっています。持ち運びができて場所を選ばずに点検が可能になっています。

ちなみに報酬はいただいていないので好きに書かせていただきます(報酬があっても正直に書かせていただきますが)。

最初にお伝えしますが、、、申し訳です。辛口評価になります。

SP・IPテスターはいいプロダクトです!

SP・I Pテスターはとても良いプロダクトです。こちらについては実際に使用されている多くのユーザーが賛同されると思います。

SP・IPテスターはポンプの流量精度閉塞圧を測定できます。またIPテスターは輸液ポンプのテスターでありながら廃液のない閉鎖回路になっています。流量精度と閉塞試験を短時間で実施できます。http://www.tri-tech.co.jp

あくまでレンタルサービスとしては辛口になるという事です。使用後の日常点検ではなく、定期点検(半年もしくは1年に1回)を想定してレビューします。

料金について

料金からかよ。と思われるかも知れませんが料金は商品選択の重要な要素です。どんなに良いサービスでも高いと躊躇してしまいます。

シェアパックのレンタル料金は3週間で30,000円です。

ちなみに購入しようとすると

SPテスターは149,800円(テルモ仕様)
IPテスターは785,000円です。

あくまで定価になりますが合計で934,800円(テルモ仕様以外は939,800円)になります。

購入した場合は点検精度の担保のために1年に1回の校正が必要です。

IPテスター校正料金 30,000円(定価)
SPテスター校正料金 15,000円(定価)

レンタル料金と購入金額の比較はこのようになっています。

レンタルか購入どちらがいいかは施設にあるシリンジポンプと輸液ポンプの保有台数による年間点検件数によります。

使用保有台数が多い施設は購入、保有台数が少なく点検件数が少ない施設ではシェアパックによるレンタルが適していると考えます。

レンタルが適している保有台数を具体的に示すのはとても難しいのですが、レンタル期間である3週間で院内に保有するシリンジポンプと輸液ポンプ全台を点検できるのが目安だと考えます。

SPテスターの「テクニカルレポート」です。構造から計測原理など詳細を知りたい方はこちらをご覧ください。http://www.tri-tech.co.jp/wp-content/themes/tritech/assets/download/SPtester_techrepo.pdf IPテスターは準備中のようです。テスターはメーカーの推奨を得ているものと得ていなものがあります。IPテスター・SPテスターは各メーカーの推奨は得ていませんが、テスターとJIS規格で測定した正確度試験は実施しているとのことです。

*点検は病院、施設の責任で実施して下さい。こちらのサイトでは一切の責任を負いません。

シェアパックをお勧めする施設

レンタルをお勧めする施設を想定していると、臨床工学技士が少ない施設、もしくは臨床工学技士がいない施設ではないかと考えます。

ここから本格的なレビューになります。臨床工学技士がいない施設では看護師がシリンジポンプや輸液ポンプの保守点検を実施することになるかと思います。ちなみに全国の病院の60〜70%は臨床工学技士が不在です。

シェアパックは看護師でも使いやすいサービスになっているのでしょうか??

申込方法について

申し込みはトライテックのシェアパックレンタルからできます。記入内容は施設名、ご担当者、電話番号、メールアドレスの4つのみで必要であれば備考欄を記入します。「後日、医療営業部からポンプの種類等確認のためご連絡をさせていただきます」とあります。

登録すると自動メールが送れてきて、登録ができたことが分かり安心します。

しばらくすると担当の方から「お手元に届いてからすぐにお使いいただけますよう設定してお届けいたしますので、お手数大宇が下記の項目についてご回答ください」と連絡がきます。

輸液ポンプについて

  1. 機種(メーカー)
  2. 点検時の設定 設定流量・閉塞圧設定
  3. ご使用の輸液セット

シリンジポンプ について

  1. 機種(メーカー)
  2. 点検時の設定 設定流量・閉塞圧設定
  3. ご使用のディスポシリンジメーカー

この内容を返信すると、申し込み手続きは完了です。後は設定されたS P・I Pテスターが写真の状態で送られてきます。点検に必要なテスターと材料が入っているのでこれさえあれば点検を始めることができます。P Cなどを必要としないとはとてもいいですね。

臨床工学技士ならOK

しかしながらこれらは点検項目が既に存在しているのが前提のサービスのように思います。臨床工学技士もしくは看護師が保守点検を実施している施設であれば問題はないですが、これからシリンジポンプ、輸液ポンプの点検を開始する施設には優しくないというのが正直な感想です。

初見の感想「ケースが重々しい」

まずこのシェアパックのケースですが、いかにも「点検工具が入っています!」って感じで好きになれないです。サイズ感やコスト等の課題はあるかと思いますが、少々威圧的なケースに思えます。トライテックの担当者も「このケースを持って歩いていると視線を感じます。」と仰ってました。「ケースぐらい」と思われるかも知れませんが、医療機器を苦手としているユーザーがこのケースを見て「よし!点検しよう!」と思えるでしょうか?

シェアパックの外ケース
開封後

美的ユーザビリティ効果

見た目がいいデザイン(スタイリングのいい)は人にポジティブな印象を与えるだけでなく、使いやすと感じさせる効果があることが分かっています。反対に見た目が悪いことで、実際には使いやすいプロダクトも使いにくいと評価されてしまうのです。このような現象は「美的ユーザビリティ効果」といいます。この点を踏まえるとケースの見た目や、内部の梱包方法にはもう一工夫あっても良いと考えます。

NTractinskyA.SKatz.DIkar.What is beautiful is usable.What is beautiful is usable.Volume 13, Issue 2, December 2000, Pages 127-145.

使用中・点検中の感想

使用方法の動画がホームページにあり、ユニークだと思いました。使用方法は簡単なので動画の時間も短いです。点検は非常に簡単ですのでコメントは割愛させていただきます。ホームページ等に記載されている内容と相違ないです。

当院の設定で1台あたりの流量精度と閉塞圧の測定時間はシリンジポンプが15分12秒で、輸液ポンプが4分21秒でした。

機材だけではなく点検チェックリストも

個人的にシェアパックはシリンジポンプ・輸液ポンプの保有台数の少ない施設で使用されるのが適していると考えています。ですから臨床工学技士が不在であることを前提に保守点検項目のチェックリストも準備があるとより良いと思います。シェアパックに含まれるテスターと点検材料、そして点検チェックリストで何もいらない状態だと喜ばれる方もいると思います。

点検チェックリストの作成には日本臨床工学技士会の「医療機器安全管理指針 第1版」が参考になります。http://www.ja-ces.or.jp/ce/wp-content/uploads/2013/03/089a9b030c6a90b3045f15891d2d9fce.pdf

もちろん、本当にニーズがあるかの調査は必要です。また点検チェックリストの項目については医療機器点検の専門家の意見を踏まえて作成する必要があります。しかしユーザーの選択肢として用意してもいいと考えます。

返品の手続きについて

返品の手続きはメールにて集荷の時間と院内の引き取りの場所を指定すると手配をしていただけます。これでもいいのですが、個人的には返却日になったら病院に出入りしている配達業者に発送を依頼して手続きが完了する方がよりありがたいと思いました。また返品用の配送伝票が用意されていて欲しかったです。メールのやり取りもお互い手間ですし、私の勘違いで行き違いもありました。

Rentioというサービスをご存知でしょうか?レンタルの手続きから返却まで非常にスムーズです。料金も保証代込になっており非常にシンプルで頭を悩ませないですむので少々高い可能性があってもRentioのサービスを使用します。料金の支払いと住所入力はAmazonのアカウントを使用できるので名前、住所、電話番号、メールアドレスの入力もありません。

Rentioのホームページ

返品用の配送伝票が用意されており、送られてきた段ボールに入れ直してコンビニに持って行くだけで返品完了です。かなり簡単に手続きができますので次も使用してみようと思えるサービスです。

https://www.rentio.jp

ピークエンドの法則

「経験についての評価は、全体の総和や平均ではなく、ピーク時と終了時にどう感じたかで決まる。」という事が分かっています。ユーザーにサービスの経験を良かったと思って欲しければ重要な瞬間と最後の瞬間をより良くデザインする事が重要です。

Daniel Kahneman, Barbara L. Fredrickson, Charles A. Schreiber and Donald A. Redelmeier.When More Pain Is Preferred to Less: Adding a Better End.Psychological Science Vol. 4, No. 6 (Nov., 1993), pp. 401-405.

 シャアパックの重要な瞬間は点検中だといえます。I P・S Pテスターは非常に使用しやすいので問題ないかと思います。ですので最後の瞬間である、返却を改善すればユーザーにポジティブな評価をしてもらえる可能性がより高くなると考えます。Rentioのようには難しいとは思いますが、ユーザエクスペリエンスを考慮したサービスになるとよりいいと思いました。

おわりに

今回はシェアパックについてはやや辛口の評価となりましたが、㍿トライテックさんがいい方向に改善されることを期待しています。実はレビューの前の打ち合わせの際に申込フォームの入力項目が今よりも多かったので指摘させていただきました。するとすぐに項目が減り対策がなされていました。

私だけではなく多くの医療者の意見を聞いてより良い医療機器やサービスをつくっていただきたと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます。まだまだ書きたいことはありましたが長くなり過ぎるので終わりにします。

最後に医療業界全体へ

この指摘はシェアパックだけに向けたものではありません。保守点検は重要ですが、保守点検がもっと簡単に終わる医療機器、保守点検の間隔が長いくコストも安価に抑えられる医療機器を開発、販売していただきたいです。現場で点検する手間を最小限に抑えワークフローを効率化できる医療機器が望ましいです。

医療の世界にはデザイン性の低い機器やソフトウェアが多くあります。デザイン性の悪さは日々医療者を困らせ、時に患者に不利益を与えることもあります。

しかし医療の世界では医療者は専門家だから使えて当然だという考えが根強く、医療者側ですらこのデザインの問題を認識できていない人が多いように思います。

おまけ

とはいえ、デザインが良くなったからといって全ての医療事故が防げる訳ではないという記事もありますので、良かったらご覧下さい。

『ユーザビリティを向上させるだけでは医療機器関連の医療事故は防げない』http://med-interaction.info/medicalmistake/

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