非デザイナーが考える医療安全 × ヒューマンファクター × デザイン

医療安全の講演で使用した資料をブログで紹介します。全てそのままで乗せてしまうと容量が多くなってしまうので要点を絞ってます。参考になれば幸いです。

 

今日は医療機器安全とヒューマンファクターとデザインというテーマで話をします。

私は臨床工学技士で医療安全管理部兼任ですので普段は医療機器の管理や生命維持管理装置の操作・点検などをしています。その傍らで医療安全管理部としての仕事もしてます。医療機器関連のインシデントの対応やカンファレンスや会議・研修を主にしています。また外部で講演の機会もいただき医療安全を推進したいと思い活動しています。

 

 

このポスターは奈良県医療安全推進センターの患者確認ポスターの最優秀賞に選出されました。もちろんこのポスターは僕が描いたものではありません。知り合いのイラストレイターさんに僕の想いとか知識を伝えてそれをポスターにしてもらいました。他の分野の専門家との共創で新たな価値を創出することができる!医療安全にとってとても重要!と考えながら活動しています。

 

 

しかし、現実はそんなにうまくいきません。医療事故は無くならない。皆さんもそう思いませんか?

 

 

米国の死因に医療事故を加えたら、心臓病と悪性腫瘍の次に多いと言われています。この医療事故は過誤は含みません。医療における避けうるヒューマンエラーが対象です。非医療技術で多くの方が亡くなっています。25万人ですが最大で40万人ぐらいになるんじゃないかとも言われています。

 

 

では医療機器ではどうでしょう?2017年に日本病院評価機構には28,186件のヒヤリハットが発生していたと報告されています。薬剤関係のインシデントと比較すると少ないですが医療機器の中でも人工呼吸器などの生命維持管理装置では、事故が発生すると重篤化することがあるのが特徴です。なぜこれだけのインシデント医療事故が発生するのか?

 

 

ヒューマンファクター・人間の特性があるからなんですよね。これは『人間は間違えるからいしょうがないよね』ではなく、間違えるのを前提に対策を考える必要あるということです。

 

 

人間の見落としについて説明したいと思います。人間の見るという行為は、中心視と呼ばれる真ん中の点と周辺視野と呼ばれる周りの円の広さで決まります。しかし、周辺視野の広さは、注意の深さとのトレードオフの関係です。1つのモノに深い注意を向けると周辺視野が狭くなってしまいます。つまり、ある一定の条件が揃うと人間は目の前にあるものでも見逃してしまう生き物なんです。

 

 

では聴く、聴覚はどうでしょう?結婚式の会場などの人混みの中でたくさんの話し声が飛び交っていても人は特定の話を聞き分ける事ができます。こうゆうのを”カクテルパーティー効果”といいます。

人間の知覚や聴覚は脳の情報処理機能によって注意するべき情報を取捨選択して人間の認知的負荷を下げてます。それが状況によっては必要な情報を見逃してしまうエラーという結果になってしまいます。

 

 

このようにエラーが起こってしまう背景には人間の情報処理機能そして生理的機能があります。しかしながらエラーが起きたとき行為ばかりが注目され「誰がどんなミスをしたか」を対象に再発防止策を検討してしまいがちです。

その行為の背景にある人間の情報処理機能やタイムプレッシャーがあったり・多重業務に追われていかどうかなどは軽視されています。また生理的機能の段階で疲労した状態で働いていたり、夜勤などでサーカディアンリズムからずれた時間である夜間の時間帯にエラー率が上昇すると報告されています。

 

 

では医療機器のトラブル特有の背景要因について考えていきましょう。医療機器のトラブル事例を挙げていきます。人工呼吸器の取り扱い、人工呼吸器回路の接続間違いや加温加湿器の不適切な取り扱いによる加湿不足が発生しています。

 

 

こちらの輸液ポンプの事例では指1cmのズレで流量が3mlのはずが30mlで設定してしまい生命に関わるエラーにる可能性があります。医療機器という同じ機能を持ったシリンジポンプや人工呼吸器でもボタンの配置や画面の見せ方が違うので複雑であるし間違いを起こしやすいです。

 

 

例えば車であればメーカーが違っても統一されたデザインであり、メンタルモデル(頭の中にある知識や経験)は1つでいいです。専門性も低いです。皆さんもパッと見てこの車運転できる思いますよね。右にハンドル切れば右に曲がる、直感的なデザインですよね。では医療機器ではどうでしょう?

 

 

人工呼吸器どうでしょう?全然違いますよね。人工呼吸器ひとつとっても機種ごとに知識が必要です。なので専門性が高い、だから間違えるんです。

 

 

医療機器は全てとは言いませんが、使いやすくデザインされていません。これは医療職という「専門家だから使えて当然」と言った風土がこれを許していると言われています。操作間違いは個人の能力不足・注意不足であると言った考えがあることが理由として考えられます。医療機器の使用に注意を必要とするため、患者とか他のものに注意が向かなかったりします。この解決には間違いにくい医療機器を選択が重要です。

 

 

医療機器の誤った使用は人間の責任ではありません。デザインが悪いんです。人間が間違わないような設計になっていません。

 

 

ではどうしたらいいのか?それを解決するのがデザインだと考えます。デザインとは何か?おしゃれ、センス、綺麗に見せることもそうだと思いますが

 

 

医療安全にとってデザインとは設計や問題解決ではないかと考えます。議論はあるとは思いますがここではデザイン、イコール設計や問題解決とさせていただきます。(医療とデザインについては吉岡純希さんのnoteにまとめれているのでこちらを是非ご覧ください→https://note.mu/junky/n/nda94acff7a58

 

 

使いやすいデザインの原則があります。(スライド参照)

 

 

ニプロのFP-N11という輸液ポンプがあります。設計にデザイナーが関わっている医療機器です。この輸液ポンプを使って使いやすいデザインの原則を説明していきます。

 

 

システムの視認性を高める。視認性を高めるために夜間暗転モードを採用しています。人間は白い背景では黒や青、紫といった色が見やすく、黒い背景では白や黄色が見やすいとう特性があります。設定ボタンと表示に対応づけがされています。流量の表示の横に流量設定のボタン。予定量設定のボタンの横に予定量のボタン。積算の横に積算クリアのボタンがあり間違いにくい設計になっています。

 

 

この輸液ポンプの最大の特徴は輸液セットのクレンメが輸液ポンプ内部に収納されることだと思います。ドアを開けたらクレンメが閉まって、ドアを閉めたらクレンメが開きます。そのためフリーフローの防止、クランプの開け忘れ防止、医療者や患者さんによる間違ったクランプの操作を防止できます。

 

 

記憶しなくても見ればわかるようなデザイン。クレンメの設置方向は1パターンです。間違った方向だと付かないですしドアが閉まらないのでそもそも使えないです。番号による接続手順が付いてます。この番号に従ってチューブを装着することでチューブが引きのばさせることで発生する流量誤差を防いでいます。そして輸液ポンプを使う使わない関係なしに1つの輸液ラインがあればこと足ります。輸液ポンプ専用のチューブを用意する必要がないので経済的にもメリットがあると言えます。

 

 

ユーザーによるエラーの認識、診断、回復を可能にする。ヘルプとマニュアルを用意する。左の画面では気泡検知でアラームが発生しています。ディスプレイ下には『詳細』ボタンがあります。それを押すと気泡検知に対してなにが起きているか、どうすれば解除できるかといったメッセージが表示されます。経験の浅いユーザーはこれを見て対処します。この効果は学習のコストを下げれることです。

このようにデザインが良ければヒューマンエラー発生を低減できますし、それによって人の作業負荷も低下されられます。また教育に必要な時間も低減できます。

患者にとっても医療者にとってもメリットのある医療機器がもっと増えて欲しいと強く願います。

 

 

最後に認知工学者・デザインシンカーであるDon Nomanの言葉を借りて終わりたいと思います。

“エラーが起こったときなぜそうなったのかを突き止め製品や手順をデザインし直して、二度と起こらないかもし起こったとしても影響を最小限にするようにしなければならない。”

最後までご覧いただきありがとうございます。

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